SPR顕微鏡:セルベースの膜タンパク質ーアナライト分子間相互作用解析 (Biosensing Instrument)

SPR顕微鏡は、SPR分子間相互作用と明視野画像計測を組合わせることにより、分子間相互作用の分布を二次元マッピング画像として取得する革新的な相互作用解析システムです。細胞をSPRセンサーチップ上で培養し、そのままSPR計測のリガンドサンプルとして使用するため、膜タンパク質などの細胞膜上の分子を単離・精製することなく、本来の細胞膜環境に状態に近い条件で分子間相互作用の計測・解析を行うことができます。また、広い計測領域で複数細胞を同時計測することで細胞間ヘテロジェネイティの評価が出来るほか、顕微鏡レベルの分解能により局所的な二次元領域での相互作用解析にも対応可能です。

セルベースアッセイの利点

  • 膜タンパク質の単離・精製が不要
  • 細胞膜依存的な膜タンパク質の構造・機能の保存
  • 細胞膜環境そのままのin vitro計測系

膜タンパク質の単離・精製が不要

膜タンパク質は精製に手間がかかるだけでなく、細胞膜から単離することによって機能が喪失する/低下する、凝集して不溶化する、機能を維持した状態で精製できる場合でもサンプルロット間で機能性に差が出るなど、計測用サンプルの調整が難しいことが多い。SPR顕微鏡システムでは、SPRセンサーチップ上で培養したターゲット膜タンパク質を発現する細胞をそのままリガンドサンプルとして使用する(➤リガンドサンプルの調製)ため、膜タンパク質の単離・精製を行う必要がない。そのため、本来の機能を有するリガンドサンプルを再現性良く作成することができ、また細胞培養の完了後すぐに計測を行うことができます。

細胞膜依存的な膜タンパク質の構造・機能の保存

SPR顕微鏡では、培養した細胞をそのまま(膜タンパク質が細胞膜に存在しているときの状態のまま)リガンドサンプルとして計測する(➤リガンドサンプルの調製)ことができるため、細胞膜依存的な構造・機能が保持された状態の膜タンパク質との分子間相互作用解析を行うことができます

細胞膜環境そのままのin vitro計測系

SPR顕微鏡では、SPRセンサーチップ上で培養したターゲット膜タンパク質発現細胞を【生細胞のまま】もしくは【PFA処理した固定細胞】をリガンドサンプルとして使用する(➤リガンドサンプルの調製)ため、本来の細胞膜環境下/本来の状態に近い細胞膜環境下のin vitro計測系で膜タンパク質ターゲットの分子間相互作用計測が可能です。

SPR顕微鏡の特長

分子間相互作用解析システムと明視野顕微鏡システムの融合

SPR顕微鏡は、『SPR分子間相互作用解析システム』と『明視野顕微鏡システム』の2つの計測システムを融合することにより、計測領域内における分子間相互作用の二次元的な広がりをマッピング画像データとして取得(SPR計測画像)します。この計測技術により、細胞膜上の生体分子(膜タンパク質、糖鎖 など)と、これらの生体分子と相互作用するアナライト分子との分子間相互作用の二次元マッピング表示が可能になりました

マイクロ流路タイプのSPR分子間相互作用計測システムとの違い

Biosensing Instrument社のマイクロ流路タイプのSPRシステム BI社 BI-4500シリーズ との比較

〔1〕計測領域と計測ポイント(定点計測 vs 二次元計測)

〔2〕解析データの取得(定点 vs 解析領域指定)

〔3〕リガンドサンプルの調製(膜タンパク質の精製有り VS 膜タンパク質の精製不要)

SPR分子間相互作用の計測・解析

計測~解析の流れ

細胞膜 生体膜 SPR 二次元SPR SPRイメージング 分子間相互作用 相互作用 分子間相互作用計測 相互作用計測 膜タンパク質 膜タンパク タンパク質 タンパク アナライト 抗体 低分子化合物 低分子 糖鎖 レクチン
〔Step1:二次元SPR計測〕
リアルタイム表示される明視野顕微鏡画像を見ながらSPR計測に適した場所を探索(ステージ移動 3mm × 3mm、360℃回転)、SPR計測を行う領域を決定する(計測視野 600μm × 450μm)。

〔Step2:相互作用解析領域の決定〕
取得したSPR計測画像上で、相互作用解析を行う領域を選択する。

〔Step3:分子間相互作用センサーグラムの取得〕
指定した解析領域内のSPRシグナルの平均値を時系列プロットした分子間相互作用センサーグラムを作成する。

〔Step4:カイネティクス解析〕
センサーグラムの結合曲線からka、解離曲線からkdを取得、両定数よりアフィニティ:KDを算出する。

SPR計測画像

SPR顕微鏡では、サンプルをセットすると明視野計測画像とSPR計測画像がリアルタイムで表示されます。明視野画像上でSPR計測領域を決定しSPR計測を開始すると、経時的なSPR計測データの取得が始まります。SPR計測の時系列データは、計測領域内の計測ポイントごとに取得していきます。各計測ポイントのSPRシグナル強度を白-黒のグラデーションに変換して、二次元マッピング表示した画像がSPR計測画像です。

カイネティクス解析(ka/kd)とアフィニティ解析(KD)

SPR計測画像上での解析領域の指定~解析データの読出しにより、解析領域内のSPRシグナル強度の平均値を時系列にプロットしたセンサーグラムが得られます。このセンサーグラムを使って、カイネティクス解析、アフィニティ解析を行います。解析領域の指定は、画像全体(全ピクセルの平均)~任意の指定領域(指定領域内ピクセルの平均)~最小領域(1ピクセル)の範囲で自由に設定できます。最小 X:1 μm × Y:1 μmの分解能で解析領域を指定することが出来るため、細胞上の局所領域における相互作用解析が可能です。

SPR顕微鏡 計測・解析事例集

1⃣ 接着細胞 (PFA固定) ⇔ 低分子化合物・抗体・レクチンの相互作用 

ターゲット膜タンパク質を過剰発現させた接着系細胞をSPRセンサーチップ上で培養~PFAで固定処理したものをリガンドプルとして使用するin vitro SPR計測系

2⃣ 接着細胞 (ライブセル) ⇔ 低分子化合物・抗体・レクチンの相互作用 

SPRセンサーチップ上で培養したターゲット膜タンパク質を過剰発現させた接着系細胞をそのままリガンドプルとして使用するライブセル in vitro SPR計測系

3⃣ 浮遊細胞 (ライブセル) ⇔ レクチンの相互作用 

SPRセンサーチップ上に固相化したターゲット膜タンパク質を過剰発現させた浮遊系細胞をリガンドプルとして使用するライブセル in vitro SPR計測系

4⃣ 脂質膜小胞 ⇔ 低分子化合物の相互作用 

SPRセンサーチップ上に固相化したターゲット膜タンパク質をディスプレイさせた脂質膜小胞をリガンドプルとして使用する非細胞 in vitro SPR計測系

5⃣ ターゲット特異的結合の検証 

ポジティブコントロール、ネガティブコントロールを用いてSPR顕微鏡で検出されるSPR反応がターゲット特異的な相互作用によるものであることを確認

デモ計測のご案内

SPR顕微鏡のデモ計測においては、①計測に適した品質の細胞サンプルの作成、②評価目的にあわせたターゲットタンパク質とアナライト分子の組合せ、③最適な評価を行うためのリファレンスおよび計測条件の設定が必須要件となります。

特に相互作用の標的リガンド(膜タンパク質)となる細胞サンプルは、分子間相互作用システムとしては独自の作成方法であり、サンプルの品質が計測精度を大きく左右することから、綿密にコンタクトを取りながら準備作業を進めます。

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